箱庭療法について
当オフィスでは通常の言語的なカウンセリングだけに限らず、箱庭療法も導入していますのでご紹介したいと思います。
先日、高崎市、前橋市、安中市、伊勢崎市の福祉施設にご挨拶に伺った際に、「箱庭療法」と「河合隼雄」についてご存知の方が何人かいらっしゃいました。そして中には「興味はあるけれど、先生に心の中を全部みやぶられそうで怖いなぁ(笑)」とおしゃっていた方がいて、なるほどそのように感じる方も多いだろうなと今回ブログに取り上げてみようと思った次第です。
箱庭療法がどんなものかは、ネット上にあらゆる説明があるのでリンクを張るにとどめ、本稿では私自身が経験から感じている箱庭のメリット、効用の方を述べたいと思います。
箱庭療法とは(日本臨床心理士会)
箱庭療法は、セラピストが見守る中、クライエントが自発的に、砂の入った箱の中にミニチュア玩具を置き、また砂自体を使って、自由に何かを表現したり、遊ぶことを通して行う心理療法です。
通常、箱庭療法だけを独立して行うことはなく、言語的面接や遊戯療法のなかで、適宜用いられる方法です。
この療法では、砂やミニチュア玩具のイメージを活用してアイデアを広げ、上手下手ではなく、具体的な現実生活に近い表現から抽象的な非現実的な表現まで可能です。よって、言葉にならない葛藤、イメージを表現しやすいのです。また、意識していることだけでなく、気がついていなかった自分の心身の状態や動きが直接的に感じられ、自分の心の中との対話・対決へと通じ、自己理解と人格的変容が促されます。
子どもから高齢者まで、自己啓発の目的から神経症、心身症、パーソナリティ障害などにみられる心理的課題まで、幅広く用いられていますが、実施については、クライエントとセラピストと相談しながら進めます。
箱庭療法はただそれだけで行うというよりも、通常のお話をするカウンセリングの流れの中で適宜「やってみようかな」という感じで導入されることが多いかと思います。当オフィスでも、「なんとなく」気持ちが動いた時に触っていただけるようにアイテムも考えて設置をしていますので、一度見にいらしていただければ嬉しく思います。
箱庭のよいところは、言葉に依らず理性理屈に囚われすぎないで、無意識的な領域に触れながら“言葉にしがたい何か”を自由に表現できることにあるかと思います。また、“遊び心”が刺激され、余裕をつくりその人の創造的な力を湧き上がらせてくれるという点でも、とても優れた心理的アプローチだと私自身の体験から評価をしています。
こども向けのものかと思われることも多いですが、世界的に見て日本文化に相性がよいことが知られていて、成人の方にも適しているといえます。私の経験では、例えば知的に考えすぎてしまったりする高学歴の方、言葉にできない複雑なモヤモヤを感じている方、責任感が強かったり完璧主義で行き詰まり感のある方、長らく絵を描いたり物を作ることなんてしていないなぁという方、繊細でなかなか自分の気持ちをわかってもらえないと感じている方…などがふと作ってみた箱庭によって心の動きが展開することはとても多いように思います。
なお、冒頭に触れた「心の中を全部みやぶられるのではないか」と冗談混じりにおっしゃった福祉スタッフの方は、おそらくロールシャッハテストのような“心理検査”をイメージしたのだと思います。ですが、実際は箱庭はあくまでも心理療法アプローチの一種ですので、その人の自己治癒的な力を活性化させる“触媒”のようなものだと考えていただくとよいかと思います。
内的な、無意識の領域ものを知的に意識下でわかったつもりになろうとすると、その人のせっかくの内的な動きを阻害してしまいますので、セラピストはあくまでもクライエントの邪魔しないよう、しかし安心して作っていただけるよう見守る存在として場を共有させていただくことに徹するのが役割といえます。無論作品について何か感じた物を質問させていただいたり、ストーリーを共有したりということはあるのですが、無意識を探ろうとか下手な解釈をしようということではありませんので、安心して気軽に触れていただければと思います。